高齢者を交通事故と特殊詐欺から守ろう

―アルビレックス新潟の田代琉我選手と一緒に、高齢者の交通安全と特殊詐欺について考えていきます。田代選手、どうぞよろしくお願いします。
田代琉我選手 : アルビレックス新潟、背番号21、ゴールキーパーの田代琉我です。今日は、普段僕が守っているゴールと同じくらい大切な、高齢者の皆さんの安全を守るお話ができることを楽しみにしています。よろしくお願いします。
新潟県警察交通企画課安全対策係長 樋口恵子さん : よろしくお願いします。
新潟県警察生活安全企画課特殊詐欺撲滅対策係長 星野王子さん : よろしくお願いします。

―田代選手は今年からアルビレックス新潟に加入されました。新潟の印象はいかがですか。
田代 : 去年までロアッソ熊本にいて、対戦相手としてビッグスワンに来る機会があったんですが、新潟サポーターの熱さ、サッカーに対する愛、新潟全体が応援している凄さが伝わってきました。オファーが来たとき、あそこでサッカーができるイメージが湧き、それが自分の中でマッチするものでした。移籍に迷いはなかったです。

―ゴールキーパーというポジションについてもお話しください。
田代 : 小さい頃は水泳、陸上をやっていて、野球や格闘技にも興味はありました。小学校で仲の良い友達にサッカーに誘われて、5年生で始めて6年生からキーパー。もっと小さい頃ならフォワードとか点を取れるポジションが格好良く見えるんでしょうけど、自分の中では何かビビッとくるものがあって、キーパーが輝いて見えた。すごいな、キーパーって格好良いなって。

―ゴールキーパーの魅力についても教えてください。
田代 : フォワードは点を取るポジションですけど、それと同じくらい点に関わるポジションがキーパー。勝負に一番近いところでプレーでき、重要性や責任感を楽しめる、好きなポジションです。そういう部分を楽しんでいますが、攻撃参加も好きで点を取りたい気持ちはある。キーパーしながら点を取れたら良いですね。

―ありがとうございます。それでは高齢者との関わりについて伺います。ご家族に高齢の方はいますか。
田代 : 実家におばあちゃんがいます。熊本の頃は電話したりしたけど、新潟に来てからそんなに電話してないかも。ファンサービスで高齢者のサポーターと話したり、試合後にハイタッチしたりするくらいはあるけど、普段は接する機会は少ないです。

新潟の高齢者を
交通事故から守りたい

―それでは新潟県警の樋口さんから「高齢者交通事故の特徴」についてお話しいただきましょう。

樋口 : 高齢者事故の特徴についてお話しします。年齢が上がるほど、交通事故で亡くなる割合が高くなります。高齢ドライバーの事故にはいくつかの特徴があります。慣れた道、いつも通る道で事故を起こしており、「渡ってくる人はいないだろう」「いつも車は走っていない」など慣れや思い込みがあるようです。また、身体の衰えにも気をつけたいものです。若者は遠くを見て満遍なく安全確認をして危険を予測するのですが、高齢者は車の目前に視線が集中しているというデータもあり、周りの安全を確認しないまま運転をしているようです。

田代 : そうなんですね。キーパーは危険なクロスやシュートを予測していち早く反応できるよう、周囲の状況に常に気を配り、危険を予測して早めに対応するポジション。ただ、ひとりではゴールを守れないのでフィールドプレーヤーと声を掛け合いながら守ります。そのためには、日頃の練習から声を掛け合っています。

樋口 : 試合の日も、ゴール前から大きな声でコーチングされていますね。ところで田代選手のおばあちゃんは運転しますか?

田代 : 以前は運転していましたけど、免許を返納しました。今は運転していないです。

樋口 : それでは、高齢歩行者の注意点をお話しします。特に道路横断中に気をつけてくださいね。高齢歩行者の事故の約7割は道路横断中で、歩行者側のルール違反も多いのです。車の運転や歩行に大事なことは「認知・判断・操作(行動)」。高齢者は視野の狭さや身体機能の衰えにより、危険と判断して行動を起こすまでや道路横断時に「大丈夫、渡り切れる」と思っても、時間がかかっています。横断歩道や押しボタン信号機ではしっかりボタンを押して、どちらも安全な状況を確認してから渡っていただきたいと思います。また、夜間に出歩く場合は、明るい服装や夜光反射材などを身につけて事故防止を図るよう呼びかけています。田代選手は日頃の運転や夜間の運転で気をつけていることはありますか。

田代 : 事故防止につながる反射材はこれですね。僕は、夜間は危険なので運転はできるだけ控えるようにしています。高齢になると今までできたと思っていても身体がついていかないところがあると思います。自分を見つめ直すじゃないですけど、自分に何ができて何ができないのかをちゃんと再確認する必要があると思いました。

樋口 : ちょっとここで実験してみましょうか。
田代さんはまっすぐ前を向いて立ってください。横に立つ私の存在はわかると思いますが、私が手で何のマークを作っているかわかりますか(両手でバツを作る)。

田代 : わかりません。

樋口 : わかりませんよね。見えなくて正解です。ではしっかりと顔を向けてこちらを見てください。手でこんな形(バツ)を作っていたんですよ。人の視野にはものがはっきり見える中心視野・有効視野とぼやっとしか見えない周辺視野があり、それぞれの視野で見え方が変わるので、はっきり見える視野で安全確認を行ってください。田代さんは運転中に高齢者の動きが気になったり、怖いと思ったことはありますか。

田代 : 特に自転車に乗っている高齢者はよろけたりするから危険だし、距離を取って追い越すようにしています。運転して怖いと思うことは特にないですけど、バイパスを走っていると周りを見ていない人がたまにいますね。
無理な車線変更や車の死角に入り、実は知らずに危険の中にいる場合もあるので、やはり周りを見て運転してほしいです。僕も安全運転をより心がけます。

樋口 : よろしくお願いします。新潟県警ではアルビレックス新潟の試合開催日前日から道路情報板に「アイシテル事故のないニイガタ」の文字と共に、交通安全メッセージを掲表示しています。今後もアルビレックスと一緒に交通安全を伝えていきたいと思います。

さまざまな詐欺から
新潟の高齢者を守ろう

―ありがとうございました。続いて新潟県警の星野さんより「詐欺」のお話を伺います。

星野 : まず「ニセ警察詐欺」についてお話しします。新潟県において令和6年における特殊詐欺の被害件数は204件で被害額は約9億円、今年8月末時点では167件約6億6,500万円の被害が出ています。

田代 : 新潟県だけでそんなに多いんですか。

星野 : 全国ではなく新潟県だけでこれほどの被害が出ているのが現状です。去年の被害を超えている県が多く、全国的に歯止めが効かない状態です。よくある詐欺電話は自動音声ガイダンスで「この電話は2時間で使えなくなります」と被害者の不安を煽り、被害者がガイダンスに従い操作すると、まず実在の電話会社を名乗る人物が本人確認と称して個人情報を聞き出し、県外の警察官を語る人物に電話を転送します。転送先の(ニセ)警察官は「あなたに犯罪の容疑がかかっている。2時間以内に出頭しろ」などと言ってきます。これを断ると「特別に最新の技術でリモート取り調べを行う」などと言いLINEでのやりとりに移行する。そこでニセ警察官が警察手帳や逮捕状を提示してくるのです。警察はSNSで連絡することはありません。絶対に騙されないでください。

田代 : LINEの画面に出てくる警察官も偽物なんですね。

星野 : はい、偽物です。制服を着た詐欺の犯人が警察官を装います。

田代 : それだとお年寄りはびっくりしますよね。

星野 : もう一つは「国際電話詐欺」です。これは+(プラス)から始まる電話番号を使って電話をかけてきます。 実は、ニセ警察詐欺被害の大半が国際電話によるものなんです。

田代 : 先週かな、私のところにもかかってきました。出たら駄目だと思ってすぐ切ったら、2回連続できていました。あれも詐欺の電話なんですね。

星野 : 新潟県警では今、とにかくニセ警察詐欺と国際電話詐欺を広く知ってもらい、身近な人を詐欺から守ってもらうということに重点を置いた広報活動を実施しています。高齢者が対象となった事例を挙げますと、+(プラス)から始まる電話を受け、ニセ警察から「犯罪に使われた紙幣かどうかを調べるために、指定する口座に現金を移せ」と指示されて振り込んだり、現金を段ボールに入れて宅配便で送らせたり、集合ポストの上に置かせたりします。SNSに不慣れな高齢者の自宅には、現金の受け取り役「受け子」が取りに来ることも。犯人と対面する可能性が高い高齢者は、電話で犯人とのやりとりが終了するより危ないんです。

田代 : お金持ちの高齢者が狙われるんでしょうか。

星野 : そうとは限りません。息子や孫を助けるために消費者金融からお金を借りる人もいるんです。そこで、まず詐欺の入口から止めようと、国際電話利用休止の申込みや、防犯機能付き電話の活用などを広めようとしています。また、最近では、高齢者だけでなく若者にまで被害が拡大しているんですよ。特に20代、30代の被害が増加しています。田代選手にも+(プラス)から始まる詐欺電話が来たそうですが、誰でも当事者になり得ます。選手の皆さんにも詐欺の手口と現状を伝えてほしいのです。

田代 : 詐欺はいわば「心のゴール」を破る犯罪ですね。今まで高齢者だけが狙われるというイメージがあったんですけど、若い人も余裕でいられない。実家もだいぶ前ですけど、オレオレ詐欺のような電話がかかってきました。家族みんながいたので、その時は笑い話で終わりましたが、一人暮らしの人や誰にも相談できない人だったら悩んでしまうと思います。

星野 : 特にニセ警察詐欺は、誰にも相談しないように犯人から口止めされることが多いんです。いまだに典型的な孫をかたる詐欺電話もあるので、田代選手もおばあちゃんと折々にやりとりしておくと、いざ詐欺電話がかかってきたときに役立つと思います。怪しい電話があったらひと呼吸おく、いったん電話を切って家族や警察に相談する、知らない電話には出ない、お金の話はすぐに信じない、困ったらすぐに相談する。そういったことで被害は防げます。

日頃からの声掛け、
コミュニケーションを大切に

―田代選手、今日の感想をお聞かせください。

田代 : やっぱり声をかけることって大事ですね。僕は試合中、ずっと声を出しています。普段からのコミュニケーションがないとミスにつながったりしてしまうように、高齢者や身近な人が詐欺の手口を知らないと被害に遭ってしまう。繰り返しになりますが、キーパーひとりじゃゴールは守れません。試合での状況を想定し、自分の仕事や役割、ディフェンダーの動きなどどうやったらゴールを守れるのかを練習の時から話していますし、上手くいかなくても2つ目、3つ目の対策をとる。フィールドプレーヤーとコミュニケーションをとり続けるのが大事なんです。交通事故防止・詐欺被害防止も同じだと思います。

樋口 : 田代選手が練習段階からチームメイトに声をかけてゴールを守るように、身近な家族や地域社会が連携して高齢者を守る。そんな新潟でありたいですね。

星野 : 詐欺の手口を知り日常から身近な人と声を掛け合うことで、周囲に相談しやすくなることもあります。ニセ警察詐欺は家族や身近な方への口止めを指示することが多いため、ひとりで悩んでいる高齢者の変化にいち早く気付くことができれば、詐欺の恐怖から守ることができるでしょう。

田代 : 高齢者が孤立せず、安心して暮らせるように地域全体で声を掛け合い支えることはとても大事だと思います。高齢になっていろいろ衰えてくると、自分が危ない運転をしているとか、危険な道路横断をしているとか、騙されていることがわからないかもしれません。周囲の人や家族を頼った方がいいと思いますし、自分自身を守るためにも周りの人とのコミュニケーションを大切にしてほしいです。新潟県民の皆さん、地に足をつけて頑張りましょう!

田代琉我選手 プロフィール
1998年、神奈川県出身。国士舘大学を卒業後、2021年に当時J3だったロアッソ熊本(現J2、熊本県)に加入。2025年にアルビレックス新潟に移籍。ポジションはゴールキーパー。

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